いや、コロナがなかったとしても、東京五輪とカジノは一昔前のハコモノでしかなく、「新たな発想から生まれる新産業」とはほど遠い。今さらカジノを地域経済活性化の起爆剤にしようとしている大阪府・市の気が知れない。
この先も期待できるのはインバウンドくらいじゃないか。
ところで、前述した安倍氏が最初に掲げた目標のひとつ「10年後に1人当たり名目国民総所得(GNI)150万円以上増加」の「10年後」は、23年6月だった。内閣府の国民経済計算年次推計によると、13年の1人当たり国民所得は292.5万円。最新の20年は297.5万円だった。「デフレからの脱却と富の拡大によって経済の好循環を実現する」とブチ上げ、異次元緩和で市場をジャブジャブにしたのに、国民所得は7年間で5万円しか増えなかった。「150万円以上」にはるかほど遠く、このペースで「10年後」に目標を達成できているはずがない。
「経産省内閣」の限界
成長戦略になぜ具体性や中身がなかったのか。
安倍首相はアベノミクス「3本の矢」を打ち立てながら、その実、1本目の金融緩和にしか関心がなかった。金融緩和で株価が上がれば、物価も上昇し日本経済が上向くと勘違いしていた。ニューヨーク証券取引所で投資家を前にして、自らの政策を自画自賛したスピーチ、「バイ・マイ・アベノミクス」がその象徴だ。