エアコンもついている理由
映画撮影などのために「見た目」重視で作られたロボットと異なり、人が乗る市販品として、さまざまな安全対策が施されている。開発を取りまとめた石井啓範取締役によると、安全規格は国内外の建設機械に準拠しているという。
「全高4.5メートルのアーカックスは不安定そうに見えるかもしれませんが、重心はかなり低く、ロボットモードで20度、ビークルモードのときは30度傾いても倒れない建設機械と同等の安定性があります。5度以上傾くとシステムは自動停止します」
と石井さんは説明する。
コックピットのハッチは、開閉する際に人が挟まれないように、パイロットが手足を決められた位置に置かないと動作しない。さらにドアには挟み込み防止のセンサーもある。万が一、機体が倒れてハッチがふさがれることも想定して、コックピット後方には緊急脱出口もある。
そして操縦席には、エアコンも装備されている。そこには石井さんの苦い体験があるという。
「昔、建設機械メーカーに勤めていたとき、実験機を作ったんです。『実験用だからエアコンなんかいらないよ』とつけなかったら、暑くてひどい目にあった(笑)」
「動き」と「デザイン」を考えながらの開発
アーカックスの構想から完成まで、5年半を要した。
「将来的には、建築物の解体や災害レスキューの現場で役立つようなロボットを作りたい」
と、吉田さんは語る。
しかし、広く一般的に使われるようなロボットにするには、さらなる技術開発が必要と考えている。
例えば、建築物の解体現場で使ってもらうには、現在使用されている重機よりも作業的にメリットがあることを実証しなければならない。