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 分断が深まる現代日本において、生きる術を哲学者・東浩紀氏は「訂正する力」と捉える。この名を冠した新刊『訂正する力』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、なぜこの力が今必要とされているのかを考える。

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 日本にいま必要なのは「訂正する力」です。

 日本は魅力的な国です。けれどもさまざまな分野で行き詰まっています。政治は変わらず、経済は沈んだままです。

 メディアは大胆な改革が必要だと叫びます。けれども実際にはなにも進みません。人々は不満を募らせています。

 もう日本はだめなのでしょうか。ぼくはそうは思いません。ただ、そこで必要になるのは、トップダウンによる派手な改革ではなく、ひとりひとりがそれぞれの現場で現状を少しずつ変えていくような地道な努力だと思います。

 そのような地道な努力にもやはり哲学が必要です。小さな変革を後押しするためには、いままでの蓄積を安易に否定するのではなく、むしろ過去を「再解釈」し、現在に生き返らせるような柔軟な思想が必要です。

 ものごとをまえに進めるために、現在と過去をつなぎなおす力。それが「訂正する力」です。

 このような主張に物足りなさを感じるひともいるかもしれません。日本はリセット願望が強い国です。明治維新と敗戦の二度にわたって国のかたちを大きく変え、急激な成長を成し遂げたという成功体験をもっています。

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ゼロからの再出発がいいという考え方