楽天証券アセットビルディング事業部リーダーの増満 彩さん(撮影/小黒冴夏)
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新NISAで創設された「非課税枠の復活」。うまく使えば非課税で利益を受け取りつつ、何度も非課税投資ができる。金融庁と金融機関取材により裏取りをした、アエラ増刊「AERA Money 2023秋冬号」の記事。

【図表】新NISA「枠の復活」がスッキリわかる図はこちら

 新しいNISA(以下、新NISA)の画期的な新機能が「枠の復活」だ。

 リアルな例で説明しよう。2024年から2028年12月上旬までに、新NISAの非課税投資限度額いっぱいの1800万円まで投資したとする。

 12月中旬にNISA口座を見ると、100万円で買った金融商品が150万円になっていたので、売却。年内に150万円が手元に戻った。

 すると、2029年に100万円の枠が復活し、100万円分の非課税投資ができるようになる。これが枠の復活だ。

「復活する金額は、金融商品を売ったときの評価額(売却額)ではなく買ったときの金額です。『簿価残高方式』といいます」

 と教えてくれたのは、楽天証券アセットビルディング事業部の増満 彩さん。先の例では、復活する金額は売却で手にした「150万円」分ではなく、買ったときの元本「100万円」分ということ。

 投資信託(以下、投信)の場合の枠の復活のイメージも載せたので理解を深めてほしい(図参照)。

復活は売却年の「翌年」

「復活する時期は、翌日などではなく、売った年の『翌年』です」

 900万円分が翌年に復活したら、つみたて投資枠や成長投資枠で、年360万円を上限に、再び投資できるようになる。

 枠の復活をうまく活用すれば、運用途中で利益を非課税で確保しつつ、何度も非課税投資をすることができる。

 たとえばつみたてている投信を売却しても枠は復活するが、どちらかというと個別株投資に向いているかもしれない。

 Aという株が5年で2倍になった。上昇ペースは鈍っているようだし、他の銘柄に乗り換えようか––––。こんなとき、枠の復活は役に立つ。

翌日に復活しない理由

 翌日などにすぐ復活しないのは、過度な短期売買や投信の回転売買を防ぐためだろう。

 売却した年の翌年に復活するので、売却時期を12月にするなどして、非課税枠の「空白期間」を極力短くしたくなるが……。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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いつまでに売れば翌年に枠が復活する?