夏木マリさんに共感
8歳の時に養母とともに来日したサヘルさん。来日した当初は貧しく、中学時代はいじめにもあったという。
「『日本で生きるクルド人』は在日クルド人の暮らしを取材した本ですが、子どもが、日本語を話せない親の通訳を一生懸命する様子など、当時の自分と重なり、何度も涙があふれました。私も埼玉県川口市を訪れ、クルド人に会いに行ったこともあります。祖国で身の危険を感じ、居場所を求めてきたのに十分な支援を受けられない。難民との共存の道は簡単ではないのかもしれませんが、まずは彼らの存在を身近に感じてほしいです」
『あの時、ぼくらは13歳だった』は日本と朝鮮半島の歴史を二人の著者の人生を通して考える一冊。
「幼い頃にイラン・イラク戦争を経験したのでまさに自分ごとのように読めました。歴史の中で憎み合うのではなく、分かち合うことで生まれる絆もあると実感しました」
最後に挙げてくれたのが夏木マリさんの『私たちは美しさを見つけるために生まれてきた』。
「夏木マリさんの生き方が好きです。本の中で年齢はどうでもいいと書いてありますが、本当にその通りだと思います。自分の年齢も不安も味わいながら、中から自分を磨くことが大事。様々な経験をした夏木さんが今を大事に積み重ねて生きる姿勢に刺激を受けました」
(編集ライター・江口祐子)
サヘル・ローズさんセレクト5冊
『いのちのおうち』りりぃ・文、千果・絵/Clover出版
生後すぐに乳児院に預けられ、成長する中で葛藤する主人公。だが自らの妊娠・出産を経て気づきを得る
『僕たちはヒーローになれなかった。』葉田甲太/あさ出版
医師として働きながらも、NPOを設立し、ボランティアに勤しむ著者。熱いメッセージに勇気をもらえる
『日本で生きるクルド人』鴇沢哲雄/ぶなのもり
国を持たない最大の民族といわれるクルド人。新聞記者の著者が、彼らの声に丹念に耳を傾けて書いた真実
『あの時、ぼくらは13歳だった』寒河江正、羅逸星/東京書籍
終戦間近、日本統治下の朝鮮の学校で起こった諍い。41年後に二人は再会し、それぞれの人生を物語る
『私たちは美しさを見つけるために生まれてきた』夏木マリ/幻冬舎
年齢を重ねても輝き続ける夏木マリさんが60年かけて見つけた美の秘訣。外見も内面も磨く方法を伝授
※AERA 2023年10月9日号より抜粋