須磨寺で、聖徳太子の糞掃衣を再現するプロジェクトに参加し、樹木布を縫う小島さん(写真:本人提供)

 出会いは、神戸の須磨寺で行われた「令和の糞掃衣(ふんぞうえ)プロジェクト」でのこと。奈良国立博物館主任研究員の三田覚之さんの監修のもと、飛鳥時代の袈裟(けさ)の再現プロジェクトが進められています。糞掃衣とは、インドの仏教修行者が墓地などに捨てられたボロ布をはぎ合わせて作った衣です。正倉院には、それを模した樹皮染めの刺子縫いの聖武天皇の袈裟が納められています。須磨寺のプロジェクトでは、法隆寺に伝わる聖徳太子のものとされる糞掃衣を再現します。それに用いられているのが、現代の再生繊維・樹木糸を織った樹木布なのです。飛鳥時代にも用いられていた草木や土で樹木布を藍色や褐色などに染め、現物の端切れの形通りに切り取ってはぎ合わせた生地を、参拝者たちが白い樹木糸でチクチクと返し縫いして刺子にします。

 私はいま飛鳥時代に関心があり、昨年三田さんとご縁を頂いたことから、今回のプロジェクトに参加しました。お彼岸の穏やかな午後、参拝者の方々と一緒にお寺の広間で針を進めました。木の風合いを残しつつもしなやかな樹木布の手触りはとても新鮮で、不思議な懐かしさを覚えます。不器用に針を入れながら、この袈裟は自分よりも長く世に残るのだろうと思うと、古代の人々にも遠く思いが通じるような気がしました。

AERA 2023年10月9日号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?