200mバタフライの優勝後、本多は「今できる最大限のことはできたと思います。着実にステップアップできていると思うので、これを糧にパリ五輪に向けて頑張っていきたい」とコメントを残す。
7月の世界水泳選手権のときも、自分の思うようなトレーニングができなかった苦しさを吐露しながらも、「いろんな感情があったなかで、メダルを獲れたのはうれしいです。結果を見れば、練習でまだまだ追い込めるところはあると思うし、もっとレベルアップできると思うのでこれからもチャレンジしていきたい」と前向きな発言で締めくくった。
本多はいつも、彼らしい前向きな発言でチームに笑顔と勢いをもたらしてくれる。しかしながら、本多は決して生来の明るさではない。実際に話してみると分かるが、むしろ性格的にはネガティブになることも多く、一度考え始めると、とことん突き詰めて考えてしまうがゆえに泥沼にはまることもあるほど、考え過ぎる面も持ち合わせている。
そんな彼が明るくいられる理由は、途中で諦めることなくとことん考え抜くことによって、良い点、悪い点、改善点、継続すべき点をしっかりと自分なりに分析できるところだ。
レースの結果が悪くても、きちんとそれと向き合い、自分なりに分析する。その結果、悪い点しか見つからずに気持ちがネガティブな方向に向かったとしても、本多はそこで終わるのではなく、必ず改善点と課題を見つけ出すのである。こうして自分が次にすべきことを見つけ出して明確にする能力に長けているからこそ、気持ちを吹っ切って『やるしかない』と明るく、前向きでいることができるのだ。
こんな本多の姿を見ていると、ある選手が思い浮かぶ。北島康介である。
【本多という新しい柱が日本代表チームをひとつにする】
北島康介の存在は、チームの柱として日本を支え続けてきた。それは五輪で2大会連続2冠を達成したからではない。北島は、自分の調子が良い時も悪いときも常に笑顔を忘れず、前向きだった。
後ろ向きになることも、もちろんあった。だが、彼はそれを振り切るように、マスコミの前では強気の発言を繰り返してきた。それはただのビッグマウスではない。彼も本多と同じように分析家であり、自分の状況を打破する方法を必ず見つけ出し、明確な課題を持ち続けていたからこそ、強気な言葉を使うことができた。