二つの仕事の「二刀流」で成功している人も少なくない。会社員として働きながら歌人として活躍する岡本真帆さんもその一人だ。岡本さんの時間管理や仕事術に迫った。AERA 2023年10月2日号より。
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「生活していく上での基盤が二つある、という感じでしょうか」
こう話すのは歌人の岡本真帆さん(34)だ。昨年3月に発刊した初の短歌集『水上バス浅草行き』が現在8刷、累計2万部のヒットを続けている。短歌以外にも文芸誌のエッセイなど文筆の仕事を幅広くこなす一方、クリエイターのマネジメント会社で企画やPRなどを担当する会社員でもある。
「会社員としても歌人としてもお金をいただいていますが、どちらがメインという意識はありません」
歌人と会社員の顔をその都度、使い分けている実感はない、と岡本さんは言う。
「短歌って、自分にとって心地よい生活をしている時に副産物のように生み出せるもの。なので、(短歌の創作は)生活していることと等しい、ライフワークのような感覚です」
一方で、一日の中で多くの時間を割く会社員の仕事も、人間関係や心身の安定を保つ上で欠かせない、岡本さんにとっての「心地よさ」の一部。だからこそ、限られた時間を有効に使って創作活動が続けられている。
共通するベース
短歌に興味を持ったのは大学生の時。雑誌「ダ・ヴィンチ」で歌人の穂村弘さんが連載している短歌募集のコーナーで、読者が投稿する個性豊かな作品に触れ、「自分の言葉で表現する」営みに魅力を感じた。実際に短歌を創作したのは社会人になって数年後。前職の広告会社でコピーライターとしてクライアントの要求に応じるうち、自分の作品を創作したい、という欲求が高まった。
だが、コピーライターのスキルを磨けば短歌も創作できる、というわけではない。ただ、岡本さんは応用できる点を見いだした。それは「思考の段取り」ともいえるステップだ。
「例えば、短歌のお題から具体的なイメージを深めていく時、1人でブレーンストーミングするようにモチーフの断片をノートに書き出します。このスタイルは広告のコピーを考える時に商品の魅力や特徴を表現する言葉を書き出していたのと同じです」(岡本さん)
これは岡本さんの創作手法の一つにすぎない。しかし、表現のモチーフを探すアプローチは短歌と広告コピーで共通するベースもある、というわけだ。