ワクチンの3回目接種でも、前倒し接種を求める声の高まりを受け、時期や対象など詳細を詰めきらぬまま前倒しを表明して地方自治体の混乱を招いた。別の幹部は「軌道修正は当然だ。朝令暮改と言われようが妥当な判断だ」と話した。
自民党幹部「鵺みたいな政権だ」
このころ岸田が意識していたのは、自民党が政権に返り咲いた2012年以降、長期政権を築いた元首相の安倍晋三と前首相の菅義偉だ。両政権の行き過ぎた点や足らざる点を「反面教師」に自らの立ち位置を定めた。
安倍・菅政権下での「官邸主導」は、民主党政権の「決められない政治」を反面教師に、時に強引な対応で世論の反発を呼んだ。そして、コロナ対策の多くの局面で後手に回ったとの批判を浴び、急速に求心力を失って瓦解した。それゆえ岸田は先手を打つことにこだわり、批判を受ければ、ためらうことなく方針を転じた。変わり身の早さを、自民党幹部はこう評した。
「鵺みたいな政権だ」
融通無碍を可能にしているのは、岸田自身のこだわりのなさだ。安倍や菅のように、自らが立てた旗を振って政策を推し進めようとはしない。党政調会長時代の岸田とともに仕事をした閣僚経験者は「受け身で、調整型。こだわりのなさから『無色』に映った」と振り返る。
だから時に野党の言い分も丸のみする。