内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃が代表を務める政党支部が雇用調整助成金を受け取っていたことを問題視されると、わずか1週間でクビを切った。高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は、年度内に廃棄することを、自ら記者会見で発表した。結果的に争点を潰してしまうしたたかさに、野党からは「やりづらい」との声が漏れる。
「聞く力」を盾にした「安全運転」に、報道各社の世論調査は上向き傾向を示した。12 月の朝日新聞の調査では内閣支持率が49%で、10月の内閣発足直後の45%を上回った。首相官邸には、高揚感すら漂った。政権幹部は「もしかしたら長生きするかもしれない」と自信をのぞかせた。
ただ、柔軟さはもろ刃の剣でもある。羅針盤なき政策で不安定なかじ取りを重ねれば、政権は迷走するほかなく、そのツケは国民に及びかねない。そもそも求心力の源泉となる「旗」を持たない岸田には、遠心力が働きやすい。
安倍・菅両政権の中枢を務めたある議員は、岸田政権が内包する危うさに警鐘を鳴らした。
「一度決めたことが変わってしまうと、『首相の決定事項』という重さがなくなる。今後、国民に負担を求めるような厳しい政策に取り組むとき、ぐらつき、何も決められなくなるだろう」