岸田首相はそういう流れを避けたい。そのためにこの8月にワシントン郊外で開かれた米国、韓国との首脳会談で「外交の岸田」をアピール。今回の内閣改造・自民党役員人事で政権を浮揚させ、一気に解散に踏み切って総裁選での再選を手に入れたい。それが岸田首相の戦略だった。小渕氏を幹事長に抜擢し総選挙の「顔」にするという腹案も首相周辺でささやかれていた。
だが、現実は甘くなかった。茂木幹事長では総選挙の「顔」にはならない。人気を集める新閣僚も見当たらない。年内解散で政局の主導権を握るという構想は、容易ではなくなってきた。
力強さ欠く新布陣
第三に、岸田政権を取り巻く政策課題が困難さを増している中で、その対応は急務。だが、内閣・自民党の新布陣は難題に取り組むための力強さに欠ける。
ロシアによるウクライナ侵攻で加速した資源高は日本も直撃。原油・天然ガスをはじめ、小麦、食用油など様々な物価高をもたらした。さらに欧米がインフレ対策で金利引き上げを続けたのに対し、日本はマイナス金利が維持されているため、その「金利差」が円安を招いている。それが輸入物価を引き上げ、物価高が止まらない。岸田政権はガソリン価格を抑えるための補助金を支出、電力料金の値上げに対しても補助金で対応している。日本銀行が金融緩和で物価高を促しているのに、政府が物価高を抑える。ちぐはぐな政策が続いているのだが、岸田首相から政策の整合性や将来の見通しは示されていない。それが国民の政策不信と内閣支持率の低下につながっていることは明らかだ。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2023年9月25日号より抜粋