ただもちろん不安要素がないわけではない。投手で気になるのがリリーフ陣の将来的な備えだ。今年フル回転した岩崎優、岩貞祐太、加治屋蓮が揃って今年で32歳となり、年齢的にも来年以降は成績が下降していくことが危惧される。二軍を見てもリリーフで結果を残している若手は岡留英貴くらいしか見当たらない。故障による離脱が長引いている湯浅京己が復調するのはもちろんだが、現在の主力に力がある間に、リリーフタイプの投手をしっかり整備しておく必要はありそうだ。
野手で気になるのは捕手の後継者問題だ。前述した通り梅野、坂本がともに30歳を超えており、この2人に続く選手は大きく力が落ちるというのが現状だ。優勝が決まった後の試合では栄枝裕貴、長坂拳弥の2人をスタメンで起用しているが、長坂は既に29歳で栄枝にもまだ将来の正捕手と言えるほどの安心感はない。二軍でも藤田健斗、中川勇斗の若手2人が経験を積んでいるものの、ともに下位指名で入団した選手であることを考えると、そろそろスケールの大きい捕手をドラフトで狙いたいところだ。
ただどの球団にも将来的に不安なポジションがあるのは当然であり、その座を争ってチームが活性化することも考えられる。また過去の2003年、2005年の優勝は他球団で実績のあった選手を獲得して掴んだものであり、レギュラーの年齢も高かったが、今年はほとんどが生え抜きの選手だったということを考えても強さが持続するための要素が多いことは間違いない。2020年代は阪神の時代になるということも十分期待できるだろう。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。