予想外の結果「テレビの視聴はメンタルヘルスに好影響」
性別と発達段階のアンケート結果を見ると、テレビはどの属性でもほとんど悪影響を及ぼさず、特に小学生男子の場合は、テレビを全く見ないよりも30分ほど見ているほうがメンタルヘルスの状態がいいことがわかった。
この結果について野井教授は、「日本の住宅事情が大きく関係しているのではないか」と予測している。
「日本では、小学生や中学生の子ども部屋にテレビはなく、リビングに置いてあることが一般的です。家族と過ごしながらテレビを見ているため、スクリーンタイム中でも人との交流があります。それが、メンタルヘルスに好影響を与えたのだと考えられます」
また、今回の研究結果から、スクリーンデバイスの評価方法の見直しという課題も生まれたと城所准教授は続ける。
「スクリーンを視聴しているといっても、人によってはながら見をしているケースも考えられます。すると、結果を過大評価してしまう懸念が生まれます。今後は、スマートフォンのスクリーンタイムのスクリーンショットを提供してもらうなどをして、客観的にスクリーンタイムを評価する必要があると感じました」
SNSの使用についても、「視聴するだけの場合」と「投稿する場合」とではメンタルヘルスへの影響が違うのではないかという疑問も発生。能動的・受動的、それぞれの使い方が、メンタルヘルスにどんな影響をもたらすのかも明らかにしたいと話す。
スクリーンのメリット・デメリットとルール設定
近年の子どもの自殺者数の増加の背景に、スクリーンの存在があることは無視できない。2023年6月には、政府がオンラインによる「心の健康診断」を全国で導入する方針を固めるなど、国をあげて救済政策に乗り出している。しかし、いまやパソコンやスマートフォンといったスクリーンデバイスは、私たちの生活からは切っても切り離せない存在だ。
スクリーン・子どものうつ病・自殺が複雑に絡み合っている現状を鑑みると、今後、子どもたちをうつ病リスクから引き離すためには、スクリーンタイムを短くするだけでは解決しない。さらに、うつ病を発症した子どものケアは不可欠だが、そもそも子どもがうつ病にかからない環境づくりが重視される。