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加藤路瑛さん(ワニブックス提供)

 こうして、保健室へと足を運ぶ日々がつづいた加藤さんだが、頭痛の原因が「クラスのみんなの賑やかな会話」「甲高い笑い声」だと聞いた先生は「それって感覚過敏かもしれない」と話したという。加藤さんが「みんなは自分と違うんだ、我慢していないんだ」と知ったのは、このとき。すべては「感覚過敏」が原因だった。

困りごとの原因は「感覚過敏」にあった

 現在、多くの人が自身の“困りごと”として認識しつつある「感覚過敏」とは、感覚特性のひとつ。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過敏になり、日常生活に困難を抱える状態のことをいう。

 私たちは通常、光、風、音、におい、味、寒さなど、さまざまな刺激を感じ取り、その刺激に対応しながら生きており、この感じ取った刺激を「感覚」として認識している。たとえば、気温の高い夏には、暑さを感じ取って涼しい服装をしたりクーラーをつけたりして、快適に過ごそうと努めることだろう。

 しかし、同じ温度でも人によって「暑くてたまらない」と感じる人もいれば、「私はこのくらい平気。気持ちいい」と感じる人もいる。つまり「感覚」には個人差があり、本当は一人ひとり違っている、というわけだ。

 ところが、人は社会の中で生きているため「多くの人はこう感じる」という“平均値”から設定された環境や仕組みの中での生活を余儀なくされる。このとき、もし、あなたの「感覚」が“平均値”から大きく離れていたとしたら、少なからず、困りごとが発生したり、周りの人間が苦もなく行っていることが努力しないとできない、といったハードルを感じることだろう。

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「不登校」につながるケースも……