文化祭、音楽祭などについては、言うまでもないだろう。一見楽しそうに思える賑やかな光景も、見方を変えれば、単なる騒がしさと、不快なほどの人混み。そして、耳をつんざくような音へと変わる……。

誰かの快は、誰かの不快かもしれない

 加藤さんが主宰する「感覚過敏研究所」で医療アドバイザーを務める児童精神科医の黒川駿哉氏は、感覚過敏の実態と課題について、こう話す。

「お子さんによってさまざまな感覚過敏があるなかで、もっとも苦労されているのは、それがなかなか周囲に伝わらないことだと感じている。可能なかぎり“見える化”して周囲に伝わりやすくすること。そして、社会そのものが『感覚とは人によって全然違うもの』ということを前提に、受け皿として変わっていく必要がある」。

 そう、顔かたちに個性があるように、感覚も一人ひとり違うもの。そこで、まずは私たちが「こんなふうに感じる人がいる」「決しておかしいことではない」と知ることが、すべての“第一歩”となるだろう。一方で、いわゆる周囲からの“配慮”のみでなく、感覚特性を持つ当事者からの“発信”が、周囲への理解を促すためにも必須となる。

 加藤路瑛さんは、そんな感覚特性の理解の一助とすべく、感覚に困りごとがあることを周囲に伝えるツールとして「感覚過敏研究所」オリジナルの「感覚過敏マーク」を作成した。手軽に利用できるよう、可愛いどうぶつたちをモティーフに造られた缶バッヂやシールは、オンラインで購入することができる。また、自分の困りごとをうまく伝えられない子どものために「(教育機関向け)感覚過敏相談シート」も作成。こちらも、ウェブサイトから気軽にダウンロードが可能だ。

 加えて、「感覚過敏あるある漫画」(イラスト:えいくら葛真)として、加藤氏自身がキャラクターとなり、感覚過敏とは何かをわかりやすく漫画にして伝える発信もスタート。第19話となる「学校内のセンサリーマップを作ってみたら」では、かつて加藤氏を不登校へと追いやった「学校」における感覚のしんどさを形にすることで、周囲の理解を得るといった、実際の実験に基づくストーリーとなっている。

 黒川医師は、次のようにメッセージを贈る。

「本来、感覚は一人ひとり違い、どんな感覚もその人の個性です。私たちは『感覚のとらえ方には幅がある』ということを意識し、特性のある人の声を聞いて、どんなことに困っているかを知ったり、どんな配慮があれば問題なく過ごせるかに想像をめぐらせる必要があるでしょう」 

 誰かの快は、誰かの不快かもしれない――。「2学期」に目白押しの学校行事も、感覚過敏を抱える子どもとっては“楽しいイベント”ではなく大きな“壁”の連続かもしれないのだ。今こそ、そうした“想像力”が必要だということを、ぜひ、知っておくべきだろう。

(文・国実マヤコ)

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