荒川の言葉を借りれば「みんなの背中をグッと押すような強さ」をこのプログラムに与えたのは、村元の振付師としての力だろう。

 この振り付けには、『Birds/Makeba』を作る際、村元がボーン氏から感じたことが生かされている。村元が荒川からの依頼を受けたのは、『Birds/Makeba』の振り付けのために渡米する直前だったという。ボーン氏が自由に動きながら作業を進める姿を目の当たりにした村元は、「振付師って、もっと自由でいいんだな」と感じたと振り返っている。

 荒川の元に、高橋の歌に乗って踊る村元の動画が送られてくるという形式で、振り付け作業は進んだ。

「荒川さんの美しいポジションに、あまり見たことがなかったコンテンポラリーな細かい動きをプラスして。『歌よ』は歌詞が心に響く曲だなと思ったので、それをコンテンポラリーな動きで見せたいという思いも強く、シェイ=リーンの影響もあって本当に自由に振付をさせていただきました」(村元)

 プロスケーターとして受けた刺激が、振付師としての村元を成長させている。

 高橋はエンターテイナーとして、“かなだい”はプロのアイスダンスカップルとして、村元は振付師として――。二人の世界がさらに広がっていくことを、予感させる夏だった。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」