「W杯後」を見据えて

「日本の大会では食事から移動からピッチレベルから、全てが自分たちの想像の範囲内。これが欧州では全てが変わってくるわけです。この環境で勝ったら本物。まずは、欧州でベスト8を成し遂げてほしい。それを成し遂げることで、日本ラグビーを見る世界的な目が大きく変わってくるだろうと思います」

 現代表は今度のW杯を「エベレスト」に見立てる。大会中の試合を険しい「デスゾーン」と、世界一の座を頂上とそれぞれ仮想。さらに五郎丸がいた頃から枢軸のリーチマイケルは「まず登ることに集中。でも、下りも気を付けないと」と補足する。「下り」は「W杯後」を指す。

 8年前の「W杯後」に苦労を知った五郎丸も、古巣の後身クラブで運営に携わりながら「W杯後」を見据える。日本ラグビー協会が35年以降のW杯再招致を目指すなか、各チームが専用スタジアムを確保しづらい現行の国内リーグをどうよくすべきか。秩父宮ラグビー場など融通の利くグラウンドのある関東、関西であえて局所的に開くほうが集客、予算管理が効率化しないだろうか……。

「(静岡に拠点を置く)自分たちの利益を求めればこんなこと言っちゃダメなんですけど、W杯を招致したい日本ラグビー界を考えたら特効薬はこの方法しかないんじゃないかって……。いち個人の意見です」

 自分や自分の身の回りだけでなく、ラグビー界というチームについて考える。スパイクを脱いでもラグビーの人だった。(ラグビーライター・向風見也)

AERA 2023年9月18日号より抜粋

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