2015年のラグビーワールドカップで、日本代表の「顔」として大きな注目を浴びた五郎丸歩さん。当時の心境と日本代表への思いを語った。AERA 2023年9月18日号の記事より。
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少し目立ち過ぎだ。五郎丸歩は納得できなかった。
21世紀の日本で最初のラグビーブームが起きた時、火付け役と遇され多忙を極めた。
ワールドカップ(W杯)のイングランド大会で3勝して帰国すると、当時所属していたヤマハ発動機ジュビロの活動と並行してテレビ、イベントに出ずっぱり。釣り好きな当時29歳の2児の父は、全国の子どもにゴールキックの際のフォームを真似される時の人と化した。
建前は理解できた。
2019年の自国開催大会へ機運を高めるには、日本代表が勝つとともに選手が顔を知られることも必要だとわかっていた。
とはいえ、本音でそう思うのは難しかった。
知名度が上がるのを喜ぶ仲間もいたかもしれないが、自身は違った。16年にオーストラリアのレッズへ移って家族の時間が取りやすくなるまでは、違和感と向き合ってきた。
「嫌でしたよ。昔からラグビーをしている自分としては、大きな偉業を皆で成し遂げたのに何でひとりにフォーカスされなくちゃいけないんだろうと。まぁ、ラグビーを知らない人ばっかりだったらそうなるよね……という風にマインドを切り替えるまでは、きつかったですね」