思春期になると、異性と体をぶつけることを気にしてラグビーをやめる女子も。昨春には女子だけのチーム「渋谷Reds」を発足(撮影/今 祥雄)

 多様性のスポーツとしても知られているラグビー。スポーツが苦手な子どもには、ハードルが高そうに見えるが、「STEAMタグラグビー」なら楽しめる。ラグビーという競技が持つ教育的なポテンシャルを取材した。AERA 2023年9月18日号より。

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 ラグビーワールドカップ日本代表に出身国や人種、言葉や文化が異なる選手が集まっているように、多様性のスポーツとしても知られているラグビー。だが、スポーツが苦手な子どもにとっては、運動そのものが自分とは縁遠い世界だ。誰もが果敢にタックルできたり、俊足でフィールドを駆け回れたりするわけではない。

 そんな“スポーツ弱者”も活躍できると注目されているのが、「STEAM(スティーム)タグラグビー」だ。

「STEAM」とは理数教育に創造性を組み合わせた教育理念の一つで、科学、技術、工学、芸術、数学の五つの英単語の頭文字をとった造語。そこにタックルの代わりに腰につけたタグを奪う「タグラグビー」をからめたものだという。

「普段の体育に参加しない生徒が自分の居場所を見つけて、楽しく取り組めるようになったという声をたくさん聞きました」

AIでラグビーを俯瞰

 そう話すのは、STEAMタグラグビーを開発した「STEAM Sports Laboratory」代表の山羽教文(たかふみ)さん。プログラミングとタグラグビーを組み合わせることで、運動嫌いな子どもでも、自分の役割を見いだせるようになるという。

 やり方はこうだ。マス目が描かれたボードゲームを使い、勝つための作戦を練る。実技をしたあと、今度はAIソフトで「前に進む」「敵から遠い味方にパスする」「敵からできるだけ離れる」などをシミュレーションし、“最高の戦略”を導き出す。そして、再び実践する……。

「運動が苦手な子どもは、試合で自分がどんなふうに動いているのかイメージがしづらかったりします。でも、碁盤の上でどう動いているのかがわかるので、ゲームを俯瞰して見ることができる。すると、スポーツが面白くなるんです」(山羽さん)

 チームメートと戦略を共有するためには、頭の中の考えを言語化する必要がある。会話の数も増え、コミュニケーション力も自然と鍛えられていく。山羽さんは言う。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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