世界一低いタックル

 精神的にも強くなりましたね。気が弱いなんて言われたことないし、芸人としてもコンビが2度解散するなどうまくいかない時期もあったけれどつらくなかったです。

 ラグビーへ向けられる視線は昔と本当に変わりました。前々回、2015年のワールドカップ以降は、ラグビーをやっていたというだけでちょっと尊敬されることもあるくらい。僕の高校時代なんて、ホントにモテなかったんですよ。毎日泥だらけの血まみれで、めちゃくちゃ汗臭くて、バスケ部やバレー部がスポーツドリンク飲んでる横で、そんなんじゃ全然足りないから水道の蛇口から直接ごくごく水飲んでたんです。女の子たちには嫌われていました。今のラガーマンはモテるでしょうね。うらやましい。

 ワールドカップ、本当に楽しみですね。日本チームの魅力は何といっても低いタックルでしょう。しっかり腰が落ちた、世界一低いタックルだと思います。ぜひ、そこに注目して観てみてください。それから、もしひとりでテレビ観戦するなら、おすすめはヘッドホンを使うこと。ものスゴイぶつかり合いの音が聞こえてきて、それだけで大迫力ですよ。

 今大会の予選プールは、かなり厳しいと思います。でも若い選手が多いから、怖いもののない思い切ったプレーをしてほしいですね。僕らも、心は代表とひとつです。あってはならないけれど、もし、日本代表にケガ人が続出してメンバーが足りなくなれば、いつでもフランスに飛びますよ。その心の準備はしています。

ケンドーコバヤシさんが選ぶ注目選手

姫野和樹選手(写真:アフロ)

 コバヤシさんが注目選手として挙げるのは、姫野和樹選手。相手からボールを奪う「ジャッカル」というプレーが代名詞だ。

「デカイ外国選手相手にガンガンボールを奪える。かっこいい。大ファンです。今大会は主将も務めますが、伸び伸びプレーしてほしいです」

松田力也選手(写真:千葉 格/アフロ)

 松田力也選手の名も挙げる。松田選手は司令塔役であるスタンドオフだ。

「僕はプロップという前線のポジションでした。僕らフォワード側からすると、スタンドオフは『ようやれるな』と思うくらい、責任と危険が付きまといます。キックかパスかランか、スタンドオフの判断からプレーが始まります。重責をどう担うのか、楽しみですね」

(構成/編集部・川口穣)

AERA 2023年9月18日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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