95年、写真集『楽土紀伊半島』(ブレーンセンター)を出版。しかし、心残りがあった。
「この写真集はモノクロで撮ったんですが、それだけでは物足りない、という気持ちがあった。紀伊半島には光と闇というか、不思議な暗さがある。濃密な地霊のようなものが漂っている感じがするんですよ。そういうものを写すにはカラーのほうがいいな、と思った」
カラーで紀伊半島を撮り終えたのは99年。翌年、写真集『千年楽土』(同)を送り出した。
手のひら合わせた記念写真
生まれ育った大阪の街を大判カメラで撮り始めたのは2007年。同じ年、百々さんは不思議な写真を撮影している。そこには、ブレた二つの手のひらが写っている。
「ああ、それは還暦の記念写真ですわ。ぼくの手のひらと、奥さんの手のひらを合わせて、ちょっとブラして、ちょっとじっとせい、っていう感じで、2人で練習して写しました」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】百々俊二写真展「よい旅を 1968-2023」
入江泰吉記念奈良市写真美術館 9月16日~11月26日