「予報の精度は、両者ともほとんど変わりません。台風ごとに見ると、気象庁のほうが正確だった、米軍のほうが正確だった、と勝負がつくこともありますが、年間を通して見れば互角でしょう。もし、気象庁と米軍で台風の進路予報にばらつきがあったら、『今の段階では、まだ台風の行き先は固まっていないんだな』と考えてください。5日後の状況を正確に捉えるのはまだ難しいですが、2日後くらいになれば、気象庁も米軍も大きく外すことはそうありません。どちらの予報を見ても大差ないはずです」

 なお、米軍の台風予報を見るうえで、一つ注意すべきポイントがある。米軍の予報図には、私たちが日ごろ見慣れている「予報円」がなく、最も可能性の高いルートが一つ示されているだけだ。一見、予報円のように見える、赤い点線で囲まれた水色の網掛けエリア(※下の画像参照)は、風速34ノット(秒速17.5mほど)の風が吹く可能性のある範囲を意味する。

米軍による、今回の台風13号の進路予報図

 米軍と気象庁の“表記”の違いについて、吉松さんはこう話す。

「私たちは、少しでも台風被害を少なくするため、予報の幅を予報円で示し、暴風の危険に備えてほしい地域全体を暴風警戒域としてお知らせしています。米軍の場合は、防災ではなく、あくまでも軍の船や飛行機の運航が目的でしょうから、台風の進路をきっちり示したほうがオペレーションをしやすいのかもしれませんね」

 実際、米軍の予報図に記されている日本の地名を見ると、青森県の「Misawa(三沢)」、山口県の「Iwakuni(岩国)」、長崎県の「Sasebo(佐世保)」など、主要な米軍基地がある都市ばかりがピックアップされている。

 どこの予報が当たるのかという勝負の行方も気になるが、気象庁の台風予報図で示される円や線の一つひとつに、日本人の命を守るための工夫と気概が込められていることは心に留めておいてもよいだろう。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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