台風予報は各国で特徴が違う。画像はイメージ(GettyImages)
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 台風13号が、8~9日に関東や東海に接近、上陸する見込みだ。台風が話題になると、巷(ちまた)ではひそかに、「気象庁より米軍の予報のほうが信頼できる」「いやいやヨーロッパが出す予報が一番当たる」といったプチ論争が巻き起こるが、果たして真偽のほどは……? 気象庁職員に、ズバリ聞いてみた。

【基地を重視? 米軍の「台風予報図」はこちら】

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 気象庁VS.米軍の合同台風警報センターVS.ヨーロッパ中期予報センター。「日本周辺の台風予報はどこが一番当たるか」議論は、主にこの三つどもえ戦で展開される。だが、台風予報のスペシャリストである、気象庁の台風防災情報調整官・吉松雅行さんによると、まずヨーロッパ中期予報センターは、ほかの2つの機関とは予報の性質が異なるという。

「ヨーロッパの予報は、センターが持っているスーパーコンピューター(スパコン)の予測そのものですが、気象庁や米軍は、複数機関のスパコンの予測を組み合わせ、さらに人の判断を加えて予報していますので、より精度が高くなっています。気象庁では、日本、アメリカ、ヨーロッパ、イギリスの4つのスパコンの予測をもとに、予報官が最終的な予報を組み立てています」

 スパコンは、リアルタイムで集まる世界中の観測データによって、地球の大気の状態を再現し、物理学の方程式を解いて今後の気象状況をはじき出す。スパコンへの指示書であるプログラムは、各国が改良を重ねていて、その度に各国の癖が色濃く反映される。より確からしい予報を出すには、各国のスパコンの予測の特徴を理解したうえで、経験をもとにうまく勘案する「人の手」が欠かせないのだという。

 冒頭の議論に戻ろう。それでは、気象庁VS.米軍の一騎打ちでは、どちらに軍配が上がるのか。吉松さんは、「米軍のほうがなんとなく信頼性があると感じる人もいるようですが……」と苦笑しながら、こう答えた。

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米軍の予報図は「基地」の表記が多い