大宮:電球っていうのがすごくいい。何進法とか言ってなかった?
角野:2進法です。電球にはオン、オフの2パターンあるので、2個あれば2×2で4パターンできる。3個あれば8パターンできる。で、4個で16パターン表せるわけです。僕が数学をやってたから、ですかね。
大宮:すごい。坂本龍一さんみたいな人が出てきたなと思ったよ。
角野:おー、大好きです。光栄です。
大宮:生前よくしていただいたんです。
角野:僕はお会いする機会がなくて。でも亡くなる約1カ月前に(テレビ番組の)「題名のない音楽会」で僕を含め若手が坂本さんの曲を弾いて、坂本さんが番組にメッセージを寄せてくれたから知ってはくれてた、と。
大宮:間に合いましたね。
角野:間接的にでも、関われて嬉しかったです。
大宮:教授(坂本さん)は哲学的で、数学的な世界がある。バッハも数学的だもんね。
角野:めちゃくちゃ数学的ですね。
大宮:ねぇ。バッハ以外にいる? 数学的な曲をつくる人。
角野:バルトークも、すごく数学的だなと思います。現代的な和音が出てくるんですけど、フィボナッチ数列とか黄金比に基づいていたり、中心軸システムっていう転調の仕方が対称的になってたりする。論理的に作られているなと思います。
大宮:なるほど。
角野:でも、たとえ数学的な曲を弾くとしても、本番で弾くときは、頭を無にして、直感にまかせて自然にあふれ出るのが、音楽としてはいいと思っています。
大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示。8月31日まで、アマン東京に隣接する「大手町の森」で個展を開催中
角野隼斗(すみの・はやと)/1995年、千葉県出身。2020年、東京大学大学院情報理工学系研究科を修了。東京大学総長大賞を受賞。21年、第18回ショパン国際ピアノコンクールセミファイナリスト。かてぃんとして始めたYouTubeチャンネルは登録者125万人に
※AERA 2023年9月11日号
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