この告白文化が生まれたのは、高度成長期に、いま述べたような大量の自然な出会いがあったからなのです。逆に言えば、自然な出会いが普及しなければ、告白文化は誕生しませんでした。

 当時の告白とは、「ゆくゆくは結婚を見据えて、つき合いましょう」という意味でした。自然な出会いで告白して、一度つき合いが始まったら結婚を前提とする。つまり、単なる異性の友人が告白によって結婚前提のつき合いになるというわけです。

 ただ単に友人なのか、それともつき合っているのかということを区別するには告白するしかなく、自然な出会いだからこそその境界線、すなわち告白が必要になります。だから、国立社会保障・人口問題研究所の調査では、「友人として交際している異性がいる」というカテゴリーが設けられているのです。

 もともと結婚相手を探すために出会ったのであれば告白はいりません。必然的に、出会って交際をOKしたという事実だけで、結婚相手が決まるわけです。

 告白して恋人になる、性関係を結ぶことが、結婚とほとんどイコールになるというのが高度成長期にできあがった日本の恋愛結婚における告白文化なのです。

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山田昌弘

山田昌弘

山田昌弘(やまだ・まさひろ) 1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)などがある。

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