白井:はい、日本経済の構造や食料自給率と、食料輸入先の第2位が中国であることに鑑みれば、中国と戦争などできるはずがないのです。しかし、起こるはずのない戦争が実際に起きたというのが歴史の現実でもあるわけです。その代表が第一次世界大戦ですね。当時、国際金本位制の下、ヨーロッパ諸国の経済はボーダレス化して、人・モノ・カネが国境を越えて盛んに行き交っていました。それにより諸国の利害関係は複雑に絡み合うようになったので、戦争が起こればみんな大損してしまう。だから、ヨーロッパの大国間で戦争が起きることはない、と言われていました。有名なのが、ノーマン・エンジェルによる理論ですね。

 しかし、にもかかわらず、戦争は起きました。あるいは、日本の太平洋戦争を思い起こしてもよいでしょう。アメリカと戦争をすれば破滅する、と軍の上層部だってわかっていました。そもそも最も重要な資源である石油をアメリカに依存していたわけで。だからやっちゃいけないのは自明であるのに、にもかかわらずやってしまった。つまり、合理的計算を超えて戦争は発生する、これが歴史の教訓でしょう。起こるはずのないことが起こる、これが一番怖い。

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