偶発的な軍事的衝突についてなら、机上演習くらいはしているでしょうけれども、総力戦になった時に国民生活をどうするかについては何のシミュレーションもしていない。ほんとうに戦争する気だったら、まずは戦略的物資の備蓄から始めているはずです。それから「とにかく仕事のできる人間」を統治機構の要路に配する。非常時に「仕事ができない人間」ばかりで指導部を形成しても何もできませんからね。でも、今の日本は政権におべっかを使う人間だけを重用するネポティズムで、まったく能力主義じゃない。卓越した能力の人間なら、どれほど若くても、無役でも抜擢するという仕組みを持っていない国が戦争なんかできるはずがない。
白井:日本の食料自給率がカロリーベースで38%というのは有名な話ですが、東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが『世界で最初に飢えるのは日本│食の安全保障をどう守るか』(講談社+α新書、2022年)の中で、もっと実質的に考えるべきであると指摘しています。すると食料自給率は10%に届かないくらいになると。