センターでは2015年から毎年、「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」を実施している。公共交通機関での痴漢の抑止を目的にバッグなどにつけるバッジのデザインを、全国のデザインを学ぶ学生から募集し、製品化するというものだ。学校単位での参加もあり、デザインを決めるために校内で痴漢問題について話し合いをしているところもある。その話し合いで「ショックを受けた」と女子学生がメッセージをくれたことがあったという。松永氏によると、以下のような内容だった。
男女混合グループで話し合いをしていたところ、ある男子学生が「痴漢をされると女の人も気持ちよくなってくるんでしょ?」と言った。それを聞いた女子学生は驚いて、「そんなことあるわけない。痴漢をされればすごく気持ち悪いし、恐怖しか感じない」と伝えたという。しかし、男子学生は納得できず、「でも中には気持ちよくなる女の人もいるでしょ?」と反論。議論は30分ほど続いたが、両者の間の溝は埋まらなかったという。
「学生たちがアダルトビデオなどから性に関する知識を得ている状況が問題です。この男子学生もそうだったのだと思います。性被害者を減らしていく方法は、加害者側がそもそもこれは犯罪でやってはいけないことなんだというのをきちんと理解する以外にありません。そのためには性教育が欠かせません」
今回の事件を機に、社会は“神話”を捨て去る必要があるのではないか。
(AERA dot. 編集部・唐澤俊介)
現在、痴漢抑止活動センターは「第9回痴漢抑止バッジデザインコンテスト」のデザインを募集している。詳細はURLを参照 https://scb.jpn.org/contest/2023/