4年前は田村優(横浜キヤノンイーグルス)が不動の司令塔だった。2015年大会でワールドカップの舞台を経験している田村は、2019年大会ではチームのゲームプランを理解したうえで、刻々と変わるピッチ上の状況を正しく把握し、的確な判断を下してチームを優位な形に動かし続けた。
田村の代役としては、2019年大会組の松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が候補となる。今大会にも選ばれてはいるが、コロナ禍に加えて昨年の左ひざの靱帯損傷という大けがで、不動の司令塔へと大きく成長できたであろう試合経験を積むことができなかったのが残念だ。
代表全体としても、ここまで4年間の強化の歩みは、決して順調とは言えなかった。大きな要因の一つは、もちろん、新型コロナウイルス。代表活動と国内大会の両方が大きく制約を受けた。英国とアイルランドの4協会の連合代表ライオンズをはじめ、アイルランド代表、オーストラリア代表ワラビーズ、スコットランド代表、フランス代表、イングランド代表、ニュージーランド代表オールブラックスなど、2019年以前は想像もできなかったような質の高い対戦相手に恵まれたが、前回大会前の4年間に比べると代表活動の時間数は限られ、1次リーグのライバルチームと比べたテストマッチ(国代表同士の対戦)の絶対数も少なかった。
もう一つの大きな要因がサンウルブズがなくなったことだ。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ3カ国のスーパークラブによる対抗戦「スーパーラグビー」に日本から参加していたサンウルブズは代表強化の一環として機能し、選手たちは強豪3カ国の代表選手も出場する強度の高い試合を経験することができた。日本大会直前の2019年には、代表候補選手やサンウルブズの選手らで「ウルフパック」というチームも編成し、戦術や選手の組み合わせなどを試したり、選手のコンディションに応じた強度の試合を経験させたりすることができた。しかし、2020年を最後にサンウルブズはスーパーラグビーから除外され、コロナ禍もあって日本の選手が国際レベルでの経験値を高める機会は激減した。