AERA 2023年8月14-21日合併号より

「まず、個人を尊重する社会になり、家族というものがゆらぎ、結婚しない若者が増えていきました。そして96年に労働者派遣法が改正され、派遣対象が16業務から26業務に拡大されると非正規雇用が増え、若者は安定した仕事に就きにくくなりました。雇用は、社会との接点にもなっています。その接点が切り離されると、孤独や孤立に陥る傾向が強くなります」

 だが、興味深い調査がある。

 今年3月、シンクタンクの「生協総合研究所」が25歳から54歳まで約1万1千人を対象に「人々のつながりの実態把握に関する調査」を実施した。その中で、日頃の生活について「A:わずらわしくても、人との付き合いが密接な社会がよい」と「B:さびしくても、個人の自由を尊重してくれる社会がよい」とでどちらが近いかを問うた。

 すると、Aに「近い」「どちらかといえば近い」と答えた人は約34%だったのに対し、Bに「近い」「どちらかといえば近い」と答えた人は倍近い66%になった。この調査で座長を務めた石田教授はこう話す。

「つまり、多くの人はつながりを求めていないということです。しかし、一貫してその気持ちでいられるかと言えば、それほど簡単ではありません。やはりどこかで、つながりがないことが寂しかったり、理解してくれる人がいないことに対し不満を感じているのだと思います」

 孤立や孤独の問題は、いま政府も取り組みを強めている現代の課題だ。(編集部・野村昌二)

AERA 2023年8月14-21日合併号より抜粋

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