「院内がん登録」はあらゆる治療(無治療を含む)をおこなっている人のデータであるため、今後集計後に発表されるであろう「院内がん登録」の5年生存率については、「KEYNOTE189」の数値が参考になるかもしれない。

高橋医師への取材をもとに編集部で作成

 また、免疫チェックポイント阻害薬の大きな特徴は、効果が出た患者は、経過を追跡すると生存曲線が水平になる。つまり、効果が出て、5年など一定期間を過ぎると亡くならないで、そのまま治癒に近い状態を保つこともある。

「進行肺がんの患者さんに対する治療の現在の大きなトピックスは、免疫チェックポイント阻害薬を1年間続けて効果があった人は、その後休薬しても効果が持続するという仮説の検証です。それを証明するために、現在、治療効果のある人を、治療を継続する群と休薬する群にわけて比較する医師主導臨床試験が我が国でおこなわれています」

 この結果、休薬しても効果があるということになれば、患者にとってこんなにうれしいことはないし、医療経済の面においても多大な影響があると、高橋医師は期待を込めて話す。

肺がんステージ4の患者への説明は?

 こうした良い治療結果が出てきている中、高橋医師は肺がんステージ4の患者にどのような説明をしているのだろうか。

「私たちの外来を受診する患者さんには、『治療法は半年に一度くらいアップデートされていて、毎年ガイドラインを改訂するくらい治療法は増えていますよ』と治療に対する希望についてお話をすることが多くなりました。ここ数年、数々の国際臨床試験でも良好な結果が出ていることなどをお話しすることもあります。患者さんに安心感を与えることができていると思います」

 最後に、本記事の最大のテーマである「肺がんステージ4は、免疫チェックポイント阻害薬で治るのか」ということについてだが、高橋医師ははっきり「イエス」と答えてくれた。

「現在、数々の臨床試験がおこなわれています。その結果、新しい薬剤が出現したり、さまざまな薬剤の組み合わせによる治療が可能になったりすれば、肺がんステージ4でも10年、15年生存する人が確実に増えてくるはずです。なかにはそのまま治癒という人が出てきても、全く不思議ではない時代になってきました」

(取材・文/伊波達也)