京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで注目を集めた、がんの最新治療薬「免疫チェックポイント阻害薬」。がんがもっとも進行したステージ4の患者でも治癒を目指せる薬として期待され、肺がんにおいては2015年12月にオプジーボ(一般名ニボルマブ)が、16年12月にキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)が国内承認されており、臨床現場で使われて7、8年が経つ。それらの薬剤は、5年生存率をどれだけ向上させることができたのか。全国規模のデータがまだ発表されていない段階だが、臨床試験の結果は専門学会などで発表され始めたという。肺がんの薬物療法の最新事情について、順天堂大学順天堂医院呼吸器内科教授の高橋和久医師に取材した。
【グラフ】5年生存率が2~3倍に向上した肺がん国際臨床試験の結果はこちら
* * *
がんのなかでももっとも死亡者数が多い肺がん。年間死亡者数は7万5585人(男性5万3247人、女性2万2338人)だ(20年「がん統計」国立がん研究センター)。
治癒できる可能性のある手術ができる状態で発見される人は3〜4割程度で、手術ができない場合は、薬物治療により治癒ではなく延命を目指すのが定石だ。
非小細胞肺がんの5年生存率は1期が82.2%、2期が52.6%、3期が30.4%、4期が9.0%。これは国立がん研究センターが取りまとめている、全国のがん診療連携拠点病院の「院内がん登録」を集計した「2014-15年5年生存率報告書」(23年3月発表)のデータだ。5年生存率は、患者の経過を5年間追い続け、さらにその集計・精査に時間がかかるため、発表までに10年近い年月を要することもある。
現在、治療を受けようとする、あるいは受けている患者が自分のがんの5年生存率を調べても、それは「一昔前」の治療法を受けた患者の結果でしかない。
なかでも、肺がんの薬物治療の進歩は著しく、免疫チェックポイント阻害薬登場「以前」と「以後」では状況が全く異なると推測される。しかし、現在最新の5年生存率は、上記の15年までのデータのため、免疫チェックポイント阻害薬登場「以前」のものだ。いち早く、「以後」のデータを知りたいところだが、その発表にはまだ時間がかかりそうだ。