鈴木大介は日本将棋連盟の常務理事職を6年務め、現在の「将棋ブーム」を運営側から支えた。今後はプレーヤーとして、将棋と麻雀、二つの世界で注目を集めるだろう(撮影/写真映像部・上田泰世)

 今年3月。鈴木は理事退任後のことを考えていた。

「うちのかみさんと朝、食事してるときに『理事を辞めたらまた1日10時間、将棋に打ち込みたい。たぶんタイトルには届かないけれど、もう少し勝てるようになると思うから試してみたい』と言ったんです。それと『尊敬してる麻雀プロの人から、麻雀プロにならないかと誘われちゃって。面白いかねえ』と言って。かみさんが『麻雀好きなんでしょ?』と言うんで『もちろん好きだし、プロにも負けないと思うよ』ぐらいのことは言った。そしたら『だったら、やってもいいんじゃないの?』と言われて」

 棋士と雀士の「二刀流」は前例がない。麻雀界の方は公式戦が多く、日程調整などのハードルもあった。しかし関係団体の理解もあって、話はトントン拍子に進んでいく。5月にプロ入りが決定した。

「人生は短いですから、プレーヤーとして、もう一つどこまでいけるのか挑戦してみたい。それと同時に、やっぱり将棋と麻雀、どちらも好きな世界なので、その二つを盛り上げる架け橋みたいになりたい。将棋ファンの人が麻雀に行ったり、麻雀ファンの人が将棋に行ったりして、どちらも盛り上がるように役立てればいいなと思っています」

(構成/ライター・松本博文)

※AERA2023年8月7日号では、麻雀のMリーグについても語っている。2021年春から今春までのこの連載をまとめた『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』(朝日新聞出版)が発売中

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