「今の高校生は僕よりも優秀ですよ。でも、日本の教育制度の中ではその自覚を持たせてもらえない。自己肯定感を上げることができないのが日本の教育の最大の問題だと思います」

 昨年、学外イベントを企画し、大成功に導いたリーダーの生徒に、よぎさんはこう質問した。

「今回の経験からあなたが得た学びは何ですか」

対照的な履歴書

 生徒は黙り込んでしまった。それでこんなヒントを与えた。

「将来、社会人になって今回と同じように人、モノ、予算を使うイベントの企画を任されたら、あなたはうまくこなす自信がありますか」

 生徒は「はい、できます」と力強く答えた。「それが、あなたが学んだことですよ」とよぎさんが言うと、生徒はうれしそうな表情を浮かべたという。

「社会で活躍する上で最も重要なのは自分の能力を自覚する自己肯定感。これが日本人には圧倒的に足りない」

 対照的なのがインド人。その象徴として、よぎさんは自身の履歴書を見せてくれた。こんな書き出しで始まる。

「よぎは日本で歴史的なことを成し遂げました。日本初アジア系インド出身の議員になり、日本初外国出身の公立学校長になり……彼は間違いなく日本で最も認知度の高いインド人」といった具合。計8ページで日本語と英語で4ページずつ。職歴欄には業務内容と成果がぎっしり。「日本でこんな履歴書を書く人がいますか」とよぎさんに問われ、再就職面接で「部長ならできます」としか答えられない元管理職の話を思い出した。それにしても、よぎさんはなぜ、履歴書にここまで書き込むのか。

「履歴書は自分が習得したことを再確認するツールなんです」

 インド経済の勢いの源泉は「ハングリーさと自己アピール力の強さ」だという。それを地で行くよぎさんのエネルギーに圧倒された。自伝『日本に導かれた運命』(白水社)が今秋に刊行予定だ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年8月7日号

暮らしとモノ班 for promotion
大人向けになった!「プラレール リアルクラス」は飾って良し、走らせて良しの再現度にときめく