茨城県立土浦第一高校・附属中学校長 プラニク・ヨゲンドラさん(46)/インドの大学・大学院修了。1997年に初来日。IT企業、日系大手銀行等の勤務を経て、アジア出身初の江戸川区議に。2012年に日本国籍取得(写真:本人提供)
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 目覚ましい経済発展を続けるインド。その勢いの源泉は何か。今年4月に茨城県の土浦第一高校・附属中学校長に就任した「よぎさん」こと、インド出身のプラニク・ヨゲンドラさんに聞いた。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

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 日本でのビジネスや政治家の経験を経て、今年4月に茨城県の名門校、土浦第一高校・附属中学校長に就任したインド出身のプラニク・ヨゲンドラ(愛称よぎ)さん。日本在住20年余のよぎさんの目に、インドと日本の違いはどう映っているのか。

 最も違うのは「人」だという。

「インド人は大らかなのに対し、日本人は固定観念に縛られています」

 ビジネスで感じたのは「約束」と「スケジュール」の至上主義。約束したスケジュールを守るためならなんでもやるのが日本流。インドはスケジュールよりも人の都合重視だという。

 よぎさんは、日本人には「お客様は神様」という意識がある、とも指摘する。たしかに、「カスハラ」は日本で社会問題化している。

お金がすべての日本

お金を支払う側がすべての権限を握り、自分のルールをのみ込ませようとします。これは『お金』の価値がすべてに勝るという固定観念です」

 よぎさんがさらに挙げたのが、多様性を受け入れる素地が日本はインドに比べて圧倒的に小さい、という現実だ。

「インドで差別を受けた経験のある日本人を私は知りませんが、日本でインド人を含む外国人が差別を受けるのは日常茶飯事です」

 先日も都内の駅で電車から降りた時、「なぜ日本にいる。自分の国に帰れ」と見ず知らずの男性から突然責め立てられた。

「日本では肌の色が違うというだけで差別されます」

 一方のインドは、多民族が共生する人種のるつぼ。これからの時代、どちらが優位なのかは明白だ。よぎさんが日本の教育界に飛び込んだのも、次代を担う若者に多様性を身につけてもらいたい、との思いからだ。もう一つ、教育で大事な要素は「自己肯定感の醸成」だという。

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