会場内には逝去したフジロック出演アーティストの名前を記したボードも。ジョー・ストラマー、忌野清志郎など(写真/森 朋之)

 さらに今年のフジロックでは新サービス「FUJI ROCK PLUS」がスタート。“PLUS1”(2万円/各日限定200枚)を購入すれば、専用シャトルバス、専用休憩スペース、飲食店での優先購入が可能。トイレや飲食店に並ぶ時間を考えると(いちばん長いときで30分くらい)大きなメリットだが、チケット代に1日2万円をプラスするのはかなり厳しい。(ちなみに筆者がこのパスを使って食事を優先購入していた人を見ることはありませんでした)

“フェス飯”は1食あたり1000円前後で、コロナ前に比べるとおそらく2割ほど上がっている。ビール代・飲料代などと合わせると、食事の費用は1日あたり5000円程度。チケット代、宿泊費、交通費、諸経費を入れると3日間で12万以上は必要だろう。税金や各種保険料は高く、物価は上がり、給料は頭打ちという状況のなかで、フェスにこの値段を払うのは本当に大変だと思う。ちなみに筆者は、「絶対に行く」と決めているので、そのための予算を優先的に確保している(もちろん、その代償はたくさんあります)。

 毎年フジロックに通っていて感じるのは、観客の年齢層が他のフェスと比べて高いこと。3日間のために12万以上を払うとなると相当な準備が必要だし、10代後半~20代前半にとってはかなりハードルが高い。Under 22 チケット(高校生以上:2023年7月30日までに満22歳以下は1日券18000円)も用意されているが、若い音楽ファンがもっと気軽に来られる施策が求められる。(若い人が少ないフェスに未来はないので)

 もう一つの変化は、インバウンド需要の増大。北米、アジア各国を中心に海外からの来場者は明らかに多くなっていると思う。あくまでも私感だが、今年は中国から参加していた人が増えていた気がする(ファミリーでの参加も多数)。香港のクロッケンフラップ、フィリピンのワンダーランド・フェスティバルなどアジア各国でも魅力的なフェスが増えているので、競争は必至。これからは海外の音楽ファンに向けたアピールも必須だろう。

 運営コストの値上がりによるチケット代の高騰。少子化社会における、若いオーディエンスへの訴求。そして、海外の音楽ファンに対するアプローチ。フジロックに限らず、アフターコロナにおけるフェスの在り方は今後、大きく変化することになりそうだ。

(追記:今年のフジロックでは、トイレの手洗い場に長蛇の列が。コロナ渦で手洗い習慣が身に付いたからでしょうか? 来年は手洗い場の増設をお願いしたいです)

(森 朋之)

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