別の元社員Bさんは、ビッグモーターの複数の店舗で10年近く仕事をしていた。Bさんは、こう振り返る。
「環境整備点検のときは、本社の幹部が直接、店舗にやってきます。これで昇進、降格、異動、給料などが決まることがある。環境整備点検がある直前には、接客より掃除を必死にしました。床掃除はピカピカどころではなく、すり減るほど繰り返し磨いた。とりわけ、3か月に1度は創業者の兼重宏行・前社長や息子の宏一・前副社長がやってくるので、ピリピリした雰囲気に包まれました。新社長となった和泉伸二専務も同行することもあった。前の社長や副社長のことはロイヤルファミリーとか、雲の上の人を指す『雲』という呼び方をしていました。名前を呼ぶなんて恐れ多いという感じでした」
Bさんのスマートフォンには、環境整備点検があった時のLINEが残されていた。
<トイレは何度磨いたか>
<商品車の止め方は大丈夫か>
など、店長や地域を統括するマネージャーからの事細かな指示があり、なかには、
<アルバイトに来てもらい、店の3つ先の信号あたりで見張りをさせられないか>
という内容のものもあった。

雑草が見つかって一発異動
「環境整備点検では、前の社長や副社長が車で到着した瞬間、仕事中でも立ち上がって『おはようございます』『お疲れ様です』などと最敬礼できるかどうかで、点検の厳しさが大きく変わります。本社幹部の乗ってくる車や道順、時間はおおよそわかっているので、少し離れた信号のところでアルバイトに見張らせて携帯電話で連絡してもらって、一斉に挨拶ができるように準備するのです。この作戦は成功しました」(Bさん)
そしてLINEには、
<除草剤、雑草対応やっているか>
ともあった。Bさんも「除草剤を使っていた」と証言する。
「除草剤を使うのは雑草を抜く程度では間に合わないからです。それと、環境整備点検のチェック項目があまりに多くて、雑草を手で抜く余裕もないので除草剤になりました。雑草が見つかって別の店舗に一発で異動になった社員を何人も知っています。店長はLINEで街路樹などの写真をよく上司に送信、『大丈夫ですか』と確認していましたよ」