利用法とてもカンタン
そんな悩みは、全国共通だ。共働き家庭の場合は、お弁当を作って学童保育に送り出すケースが多く、悩みを超えて、悲鳴があがる。
「ただでさえ慌ただしい朝に、もうひとつルーティンが加わって、それはそれは大変です。冷蔵庫が空っぽで、早朝からスーパーに走ったこともあります」
と話すのは、東京都港区議の清家あいさん(48)。今は高校生になった娘にお弁当を作り続けてきたが、周囲の多くの親も負担に感じていたという。特に夏休みは食中毒の心配もある。「なんとかしてほしい」という声に後押しを受け、区へ積極的に働きかけた結果、今夏、同区内の学童クラブなど38施設でお弁当を受け取れるサービスの実施にこぎつけた。
利用方法はいたって簡単だ。親がスマホなどの端末から注文と決済をして、学童クラブで受け取るだけ。1食520円。区が事業者と配送料などを一括契約していて、1施設で弁当1個でも注文が可能だ。初年度は、学童クラブに登録または待機している児童が対象で、一部施設では保護者が急病などの事情がある場合、一般来館でも利用できる。今後はアレルギー対応など質の向上をはかりたいという。
同様のサービスを導入している自治体は各地で増えている。企業への宅配弁当事業「シャショクラブ」を手がけるRETRY(東京)は、2018年の葛飾区を皮切りに、現在は渋谷区、千代田区など6区と提携。いずれも1食約500円で、学童の利用者(親)が個別にスマホから注文して、学童で受け取る仕組みだ。保護者会単位での契約も含めると今夏は、東京23区内ほぼ全ての自治体で合計1日3千食を販売するという。
冒頭の佐藤さんは言う。
「料理やお弁当作りは親が、ましてや母親だけが背負うことではありません。子どもは社会みんなで大切に育てるものだという意識で、サービスと使いやすい雰囲気が広がるといいですね」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年8月7日号