鹿児島城西・明瀬諒介(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)
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 7月30日、夏の甲子園に出場する全国49の代表校が出揃った。超高校級スラッガーの佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋慧(広陵)などドラフト候補も多く出場するが、地方大会で敗れた選手の中にも有力選手は少なくない。今回はそんな中から下級生時代やセンバツも含めて1度も甲子園の土を踏むことはできなかったものの、今後が楽しみな選手を投手、捕手、内野手、外野手のポジション別に紹介したいと思う。

 投手については右投手、左投手それぞれ1人ずつとしたいが、まず右投手では木村優人(霞ヶ浦)を挙げたい。昨年の赤羽蓮(ソフトバンク)など近年多くの投手をプロに輩出している霞ヶ浦だが、完成度という意味では木村がナンバーワンになるだろう。最速150キロという数字が紹介されることが多いが、それ以上に素晴らしいのが変化球とコントロールだ。

 しっかり腕を振って内角、外角に投げ分け、高低も上手く使うことができている。カットボール、スプリットはいずれも打者の手元で鋭く変化し、空振りを奪えるレベルの変化球を2つ操れる高校生はなかなかいるものではない。この夏も決勝戦こそ9回に崩れたが、それまでのピッチングは安定感十分で、疲れがありながらもしっかり試合を作る能力の高さは全国でもトップクラスだ。打撃も良いだけに、U18侍ジャパンにもぜひ選んでもらいたい選手である。

 左投手ではやはり東松快征(享栄)になるだろう。足首を痛めていた影響もあってか、準々決勝で優勝した愛工大名電に打ち込まれてまさかの2回途中で降板という結果に終わったが、それでも力を入れた時のボールは140キロ台後半をマークし、さすがの球威を見せた。下級生の頃と比べて大きく成長したのが制球力の部分で、春の県大会では3試合に登板して四死球を1つも与えていない。

 楽に腕を振って投げてもボールの勢いは申し分なく、サウスポーらしいボールの角度があるのも魅力だ。父親が重量挙げの元日本チャンピオンだったという影響もあってか、体作りもしっかり進んでいるように見える。変化球の精度が上がってくれば、プロでも比較的早くから戦力になる可能性も高いだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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