デヴィ夫人(写真:Pasya/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、デヴィ夫人のツイートについて。

【写真】デヴィ夫人も認めた「生意気キャラ」の女性タレントはこちら

*   *  *

 もう20年以上も前の話。某テレビ番組で一緒になったデヴィ夫人に「あなたはブスではない」と言われたことがあります……と、デヴィ夫人が炎上している今日この頃ふと思い出しました。

 ミスコンの是非について討論する番組でした。テレビの恐ろしさを知らずうかつに「ミスコンに反対するフェミニスト」として出演し、私はこんな話をしたのでした。

「電車で隣に座った男が股を大きく広げたので注意したら『ブス!』と言われたんです。驚いてその男の顔を見たところ、とても不細工だった。なぜ、男は男というだけで、女の顔を評価する立場にあると思えるのでしょうか! 皆さん! この問題について考えましょう!」

「ルッキズム」という言葉をもたない2000年代ジャパンで、私はジェンダーが深く関わる美醜問題に鋭く切り込んでいったのである……と言いたいところですが、実際には、「ブスと言われたんです」と言いかけたタイミングでデヴィ夫人が「でも、あなたはブスではない」とズバッと割り込んできて私の話は強制終了させられたのでした。その瞬間、え? と戸惑う私の顔がテレビでアップになったのだと思う。テレビ放送後、「見ちゃったよ……」と申し訳なさそうに私の顔を見る(または見られない)友人の深い同情の目に私はどれだけ傷ついたことか……ああーッ。当然、私や他の出演フェミニストたちの「美醜で女を差別するな」の“正しさ”は嘲笑されただけという結果。ああいうテレビの世界でやっていけた田嶋陽子先生はやはり化け物級の強さがあり、そしてデヴィ夫人の底知れぬスター性にしみじみ圧倒されたものです。

 今、デヴィ夫人がジャニー喜多川氏の性加害問題について持論を述べたツイートが話題になっています。デヴィ夫人は、ジャニー氏の功績を称え、被害を告発する被害者や、被害者擁護に立つ人を「非礼極まる」と一刀両断し、権力者に寵愛されることも一つの豊かな人間関係……と、ざっくり言えばそのようなことをツイッターで発信したのでした(例に24歳年の離れたジャン・コクトーとジャン・マレーの関係を出していたけれど、マレーはコクトーに出会ったとき既に成人)。

次のページ
「選ばれた」デヴィ夫人