左からウェニさんと1歳の長女、ティアラさん。ティアラさんも2人の子を日本で出産。マザーズの活動にやりがいを感じている(撮影/増保千尋)
左からウェニさんと1歳の長女、ティアラさん。ティアラさんも2人の子を日本で出産。マザーズの活動にやりがいを感じている(撮影/増保千尋)

「『医師は患者より上』と思われがちで、診察の際に言われたことがわからなくても萎縮して質問できない外国人妊産婦さんが多いんです。忙しい医療現場では、文化的な背景が違うために日本のやり方を知らなかったり、言葉が通じなかったりすると、“お荷物”のように扱われることもあります」

 母国との医療体制の違いに対する戸惑いもある。たとえば、日本では自然分娩(ぶんべん)が主流だ。帝王切開は基本的に医療上の必要性がある場合に限られ、麻酔を用いた無痛分娩に対応する病院もまだ少ないが、坪野谷さんによれば、海外では妊婦が出産方法を選択できる国も多いという。外国人妊産婦や受け入れ側の医療者を支援する公益財団法人かながわ国際交流財団の福田久美子さんは、「出産は食文化と同じぐらい多様」だと話す。

異国のワンオペで孤独

 産後の孤独も深刻な問題だ。

 インドネシア出身のウェニさん(30)は、1年半ほど前に夫の仕事の関係で来日し、長女を出産した。だが、産後に夫が出張で頻繁に家を空けるようになると、異国でのワンオペ育児に追い詰められた。母国では、両親が子育てを手伝ってくれるのが一般的で、ベビーシッターも安価に利用できる。

 マザーズのインドネシア人通訳である荒井ティアラさん(43)はこう振り返る。

「当時のウェニさんは、赤ちゃんを育てる自信がないと言っていました。1人では外出もできず、産後うつ状態でした」

 外国人妊産婦を支援する行政や民間の取り組みはまだ少ない。外国人の人口が日本で4番目に多い神奈川県は多文化共生の先進的な取り組みで知られているが、福田さんによれば、同県でも10年ほど前まで外国人妊産婦の苦境を把握できていなかった。

 夫の学業や仕事の都合で来日した外国人女性は日本語が堪能でないこともある。その場合、行政や病院とのやりとりは夫が主体となるため、当事者である女性の声が拾えていなかったことが一因だという。

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