作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は鳩山由紀夫さんが政治家を志したきっかけを伺いました。
* * *
大宮:理系で、データを使う人が総理になったときに、国民がウワッとなった感じ、覚えてます。
鳩山:そうですか。私はオペレーションズ・リサーチを学んでいました。経営工学みたいなものです。数学を使って経営をどうやってより最適な方向に導くか。例えばブラックジャックで一番勝てるのはどの戦術かとか。くだらないことばっかり。
大宮:ブラックジャックって、あのトランプの?
鳩山:そうそう。統計学的に最適な戦略があるんです。そういう意味で、最初の選挙のときに、「政治を科学する」っていう言葉を気に入って使ってたんですけどね。私の政治におけるふるさとの北海道・室蘭で。でも「政治を科学する、なんて言ってもだめだよ」って弟の邦夫に言われました。
大宮:当時は東京で言っても、「ん?」って感じかもしれないですけど。
鳩山:今は「コーヒーを科学する」とかね、いろいろ出てきてますよ。
大宮:ちょっと早すぎた。そもそも政治家になりたくなかったのに、アメリカで博士をとって、なぜ国政選挙に出るために帰られたんですか。
鳩山:私は1970年から76年までいたんですけど、76年はアメリカ独立宣言からちょうど200年祭だったんです。一年中アメリカ人が、アメリカ人であることを誇りに思う年だったわけですよ。
大宮:はい。
鳩山:翻って、日本人が日本人であることをどこまで誇りに思えているかっていう自問自答をして、日本をもっと誇りに思えるような国にしないといけない。じゃあエンジニアで身を立てるかと思ったけれど、自分がやっている理論で世の中を変えられるとはとても思えなかった。ならばいっそ、家を利用しちゃおうっていう発想ですよね。鳩山の家だから、政治家を目指したら、その道に進めるかもしれないと。向いていないけれどもやってみようと。
大宮:鳩山さんは、どんなところが政治家に向いてないと思いますか。