たにあい・ひろき/1994年1月6日生まれ、取材当時27歳。2020年、四段昇段。棋風は振り飛車党。現在は東大大学院博士課程に在籍中。著書に『Pythonで理解する統計解析の基礎』。趣味はピアノ(2021年9月撮影/写真映像部・東川哲也)
たにあい・ひろき/1994年1月6日生まれ、取材当時27歳。2020年、四段昇段。棋風は振り飛車党。現在は東大大学院博士課程に在籍中。著書に『Pythonで理解する統計解析の基礎』。趣味はピアノ(2021年9月撮影/写真映像部・東川哲也)
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 6月に史上最年少で名人位を獲得した将棋藤井聡太七冠は、先日も棋聖戦を4連覇し、前人未到の八冠にまた一歩近づきました。AERAに連載した棋士たちへのインタビューをまとめた『棋承転結 24の物語 棋士たちはいま』(松本博文著、朝日新聞出版)では、渡辺明九段をはじめ多くの棋士が、藤井七冠との対局の印象を語っていて、小学生だった頃やルーキー時代からタイトルを獲得していった現在まで、藤井七冠の軌跡が感じられます。2021年11月1日号に掲載された谷合廣紀四段のインタビューでは、東大工学部卒・大学院在学中の棋士らしく、将棋界にはデジタル化が、藤井七冠には「止めてくれる人」が必要だと語っています。(本文中の年齢・肩書はAERA掲載当時のままです)

*  *  *

「想像以上に反撃が厳しく、粘りのきかない展開にしてしまいました。今年の楽しみがひとつ消えて悲しいですが、強く生きます」

 10月13日、谷合廣紀はそうツイートした。棋王戦ベスト4をかけた一戦。佐藤康光九段の丸太を振り回すかのような攻めを受けきれず、敗れた。一方、年度内に六冠達成の可能性もあった藤井聡太三冠(19)もトーナメント途中で敗退。藤井と谷合の対局は実現しなかった。いずれは藤井と当たってみたい?

「藤井さんとの対局はずっと中継されるので怖いです。いやもちろん、指したいか指したくないかと言われれば、指したい。でもそんな、めちゃくちゃやりたいってわけではないです(笑)」

 藤井と当たって勝算は?

「『絶対勝てない』とまでは思いません。かなり勝率は低いですけど」

 まだ藤井「三冠」ではなく藤井「三段」だった5年前。谷合は三段リーグで藤井に勝った。棋士としての通算成績にはカウントはされないが、いまのところは1勝0敗だ。

「まあ、そうなんですけど、だいぶ前なんでノーカン(ノーカウント)です(笑)」

 改めて、驚異の快進撃を続ける藤井についてどう思う?

「八冠になる可能性はあると思います。ただやっぱり、止めてくれる人がいてほしいな、とは思いますね。藤井一強の時代を見たい方も多いとは思うんですけど、将棋界として、それはどうなのか。私が藤井さんだったとしたら、一強で敵がいなくなると、将棋に飽きると思います。もちろん藤井さんは関係なく将棋の真理を追究していくかもしれない。でもやっぱり壁みたいな存在が現れないと、藤井さん自身のさらなる成長もないような気がしますし。私は藤井さんとはめったに当たれるような立場ではないですが、他の方はどう思っているのでしょうか」

 永瀬拓矢王座(29)は竜王戦挑戦者決定戦で敗れた直後「結局、藤井二冠(当時)を抜かないと」と語っていた。

「皆さん、口には出さないだけでそう思っているような気がします」

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