陸上競技における「盗撮」の具体例(画像提供=工藤弁護士)
陸上競技における「盗撮」の具体例(画像提供=工藤弁護士)

■スタート地点後方は撮影禁止

 言うまでもないが、一般のスポーツ写真の撮影と「アスリート盗撮」はまったく異なるもので、盗撮は犯罪である。

 選手の胸や尻など、相手に羞恥心を覚えさせるような特定の部位を執拗(しつよう)に撮影する行為は都道府県の迷惑防止条例による処罰対象で、摘発されるケースも増えている。

「不適切な撮影行為をしている人は、撮影のアングルやタイミングが普通の撮影者とは明らかに異なっています」(工藤弁護士)

 今年1月に京都市で開催された全国都道府県対抗女子駅伝では選手たちの下半身を執拗に撮影していた男が警戒していた捜査員に見つかった。職務質問すると、カメラにはウオーミングアップ中や中継所で倒れ込んだ選手の胸や尻をねらって撮影した画像が多数記録されていた。男は3月に府迷惑防止条例違反の疑いで書類送検された。

「選手たち、特に女性選手は、競技中の無防備な姿を撮られて、下品な言葉とともにインターネット上にアップされてしまうのではないか、という不安も抱えています」(同)

 競技団体はスタート地点の後方などからの撮影を禁止する取り組みも行っている。

 さらに、「迷惑撮影巡回中」「場内監視」と書かれた腕章やビブスをつけた係員がスタンドを巡回して撮影者に声がけをする。

「ただ、どこの競技現場でも非常に苦労しています。そもそも、安全かつ確実、正確に大会を開催し運営することがもっとも重要であり、多くの善意で成り立っている競技会において、巡回等にまでなかなか人員を割けません。それを担当する人にとっては正直なところ『観客を疑ってかかるようなことはしたくない』という思いもあります」

 学生の大会では、大会の運営を担う学生たちが巡回している実情もある。盗撮の防止のため、声がけをするのはストレスがたまるだろう。

 工藤弁護士はスポーツ写真を愛好する人たちに、こう語りかける。

「このアングルとタイミングでレンズを向け、シャッターを切ると、選手を不安にさせてしまわないか。競技への集中を害してしまわないか、という意識、注意は、常に持つようにしてもらいたい。選手や周囲の観客、みんなが競技を楽しめるように気をつかってほしいと思います」

 競技場で撮影していれば、報道機関以外は誰であろうと、係員から声をかけられるのは致し方ないだろう。その際は、快く撮影画像を見せることを心がけたい。

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