盗撮を罰する「性的姿態撮影罪(撮影罪)」が7月13日から施行された。正当な理由なくひそかに性的な部位や下着などを撮影した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる。一方、ユニホーム姿のアスリートの胸や尻をねらって撮影する、いわゆる「アスリート盗撮」は規制の対象外となった。インターネット上には卑劣なアスリート盗撮画像があふれる。それに対して、「選手の撮影をすべて禁止にすればいい」との声も上がる。ところが、アスリート盗撮の撲滅に奔走してきた日本陸上競技連盟(陸連)で評議員・法制委員会副委員長を務める工藤洋治弁護士は「撮影の全面禁止には絶対反対」だという。真意を聞いた。
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「写真を撮る、というのは、ごく自然なスポーツの楽しみ方の一つです。プロやアマチュアの写真家、選手の家族。私だって、世界大会を見に行けばスマホでパチって撮りたくなりますよ。そんな楽しみを、ごく一部の不適切な行為をする人の存在を理由に、多くの人々から奪ってはいけない。陸連も、大会運営者もすべての撮影者を敵視しているわけでは全くありません。『迷惑撮影の防止』と『撮影を通じた観戦の楽しみ』の両立を図るべく工夫と努力を重ねていることを知っていただきたいと思います」
長年「アサヒカメラ」の編集者だった筆者は、そんな工藤弁護士の言葉に感動を覚えた。「スポーツ写真」への深い理解を感じた。
「選手は、かっこいい写真を撮ってもらうことを、とてもうれしく思っています。トップ選手は、かっこいい写真が世の中に広く知られることについても、ありがたく思っています。ですから、私としては、ぜひ『よい写真』をどんどん撮ってもらいたい」
例えば、陸連は6月に開催された日本陸上競技選手権大会では普段、報道関係者しか入れないエリアに「カメラ女子席」を設けてチケット販売などを行ってきた。
一方、同大会では「アスリートの盗撮、写真・動画の悪用、悪質なSNS投稿は卑劣な行為です」と書かれたチラシを配布したり、競技場の大型スクリーンを使った啓発活動を行ってきた。