「加齢臭」と呼ばれるものは40歳をすぎると増えますが、これはまた別の成分が原因です。脂腺の中に含まれる脂肪酸、とくにパルミトレイン酸が原因となります。パルミトレイン酸が汗とともに排泄され、皮膚の細菌叢と反応するとノネナールという成分に変わります。これが加齢臭のもとです。加齢臭対策としては、脂腺に含まれる脂肪酸を減らすことが重要になります。しっかりとしたエビデンスはまだありませんが、理屈からいうとパルミトレイン酸のもととなる中性脂肪を減らすことが大事です。つまり、油っぽい食事を控え、食物繊維を多くとることです。バランスの良い健康的な食事が加齢臭を抑える手助けになります。
皮膚には脂腺から排出される脂肪酸や、垢(あか)などによる皮脂が多くあります。汗だけでなく、これら皮脂もにおいのもとになります。例えば、足の皮脂は細菌叢と反応すると、イソ吉草酸という成分になります。このイソ吉草酸は腐ったチーズのにおいがします。足が臭い人のにおいです。
脇の皮脂は、皮膚の細菌であるコリネバクテリウムによってビニルケトン類に変化します。ビニルケトン類は、ツンとしたにおいがします。これがわきがのにおいです。
このように皮脂というのも体臭の原因となります。脇の下や足の指の間は、普段どうしても洗い残しがでてしまう部位です。また、汗をかきやすい後頭部もしっかり洗わないとにおいのもとになります。せっけんの泡で全身をしっかり洗うことがやはり重要です。
ちなみにわきが(医学的には腋臭<えきしゅう>症と言います)かどうかは、耳垢の性状で予想することが可能です。しっとりタイプの耳垢の人は腋臭症の可能性が高く、反対に乾燥タイプの耳垢の人は腋臭症の可能性が低いことが研究でわかっています。耳垢と腋臭症はABCC11という遺伝子の変異で決まります。
このような話を聞くとなるべく汗をかきたくないと思う人も多いでしょう。しかし、美しい肌を保つためにはできる限り汗はかいたほうが良いです。汗はかけばかくほど皮膚に良い影響を与えます。