メジャー移籍直後、肘と膝の不調に悩まれたエンゼルスの大谷翔平選手だが、苦境を乗り越えて、二刀流に磨きがかかっている。大谷選手が進化した理由は何か、貪欲に野球に取り組むのはなぜか。メジャーリーグアナリスト・古内義明さんが語る。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。
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メジャーリーグでは、スター選手は敵地でブーイングを浴びるのが常識です。しかし、大谷選手がブーイングされることはほとんどありません。ひいきチームの選手と比べることがとてもできない、超越した存在なんです。逆に大谷選手を敬遠すると地元チームにブーイングを浴びせるくらい。誰もが大谷選手を見るのを楽しみにしています。
現地の実況などでは、大谷選手を唯一無二の存在という意味で「ユニコーン」と呼びます。まさにその通りでしょう。野球界にとどまらず、アメリカ4大スポーツすべて含めてもナンバーワンの“メガ”スターの地位にのぼりつめました。
メジャーリーグ6年目、29歳の今年はエンゼルスとの契約最終年。大谷選手の「人生設計」では引退は40歳です。今季はキャリアのなかでは「ホップ・ステップ・ジャンプ」のうちのホップが終わるシーズンでしょう。二刀流をさらに極めるために、そしてワールドチャンピオンになるために、彼らしいFA移籍の決断をするはずです。
大谷選手は2018年にメジャーへ移籍しましたが、肘と膝にメスを入れるなど最初の3年は順風満帆には過ごせませんでした。ただ、その間も今後どういう選手になりたいか、人間としてどうありたいかのプランを持ち続けていたと思います。
この姿勢は取材した高校時代から変わっていません。20年オフにはシアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン」を訪れ、投打の動作解析をしています。理想のバッティングやピッチングに近づくのに何が必要か考え、逆算して行動できるのが彼の強みでしょう。どんな筋肉が必要か、どんなトレーニングをするべきか、スポーツ医学・栄養学・生理学なども学びながら、貪欲に理想像に近づいていくのが彼の神髄。この打席で何をすべきか、今日1日どう過ごすか、1週間では、1カ月では、シーズンではと、あらゆるスパンでこれを考えているはずです。だからこそ21年以降の飛躍的な活躍があったのでしょう。