
前人未踏の“二刀流”で世界を驚かせ続けている大谷翔平選手。今シーズンも投打とも成績を伸ばし、メジャー史上初となる3年連続の20本塁打と100奪三振を記録した。そんな異次元の活躍を見せる大谷選手だが、過去の常識から不可能とされた二刀流を貫き、自らの可能性を信じ続けられる源は何か。大谷選手が15歳の頃から取材し続けるスポーツライター・佐々木亨氏が綴った。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。
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大谷翔平が持つ感性を引き出し、そこに芽生えた発想を後押ししながら磨いてくれたのが、大谷の母校である花巻東高校野球部の佐々木洋監督をはじめとする彼が出会ってきた大人たちだった。決して過保護ではない。ただ、深い愛情を持って見守り続け、常に子どもの意思を尊重してきた両親の存在は大きい。
北海道日本ハムファイターズ時代の5年間、そしてWBCでも監督として大谷の歩みを見続け、投打の「二刀流」を一度たりとも疑ったことがなかった栗山英樹氏の存在も、大谷の秘めた能力が埋もれなかった要因の一つだろう。また、佐々木監督は高校時代の大谷に言葉が持つ力を伝え続けた。
「先入観は可能を不可能にする」
大谷はその言葉を「今でもはっきりと覚えている」と言う。要するに、限界を作らずに挑み続ける大切さを説いた言葉だ。「先入観を持たないことが、可能性を伸ばす上では大事なんだ」という佐々木監督の教えの下、大谷は「誰もがやっていないことをやるんだ」、そして「道を自分で切り開いていくんだ」という思考を築き上げていった。
メジャーリーグの強者たちがそろったアメリカ代表とのWBC決勝直前。大谷はロッカールームで、侍ジャパンのチームメートを前にこう言った。
「(相手のアメリカには)野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思います。でも、憧れてしまっては超えられない。僕らは今日、超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは、彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけを考えていきましょう」