<皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる>
女性皇族を「働く女性」とみなし、「皇室」を彼女たちが所属する組織だとみなす。すると彼女たちについて決まっているのは、結婚したら退職する、つまり「寿退社」だけなのだ。辞める決まりだけしかない組織で一生懸命働くって大変だと思う。それ以前に、もしかしたら「寿退社」という言葉は死語かもしれない。少なくとも、リアルだったのは昭和までだろう。
そもそも現行の皇室典範が制定されたのは、1947(昭和22)年。制定にあたり描かれた皇室像は、男性皇族がたくさんいて、女性皇族は若くして結婚するという世界だったはずだ。宮内庁ホームページに「ご結婚により、皇族の身分を離れられた内親王及び女王」という一覧表があるが、昭和20年代から40年代までに身分を離れた3人は順番に21歳、21歳、22歳で結婚している。卒業し、就職はせず、家事を手伝い、間もなく結婚する。それが女性の生き方として珍しくなかった時代だ。
話を佳子さまに戻す。佳子さまは普通に独立心を持っている。そこを出発点に、勝手な想像を書いていく。佳子さまが住んでいるのは、結婚まで実家暮らし一択の昭和モデルだ。かつて「一刻も早く実家を出たかった女子」だった私など、それだけでもさぞや息苦しいだろうと思う。そこに持ち上がったのが、父親の立場の変化に伴っての実家の改築話だ。仮住まいを経て、増築された家に引っ越すという。これは大チャンス。私が佳子さまだったら、絶対にそう思う。仮住まいに自分が残れば、親と離れて暮らせる。仲がいいとか悪いとかでない、独立したいのだ。これを逃す手はない、と。
佳子さまがそう考えたと想像すれば、宮内庁も堂々と最初から発表すればよいのに、と思う。だが、宮内庁だって昭和モデルの世界の一員。女性皇族の「独立心」を、どのように発表すべきか悩んだはずだ。そうこうするうちに、「一人暮らし」が世間に知れ渡り、不仲説だの結婚説だの根拠にまでされだした。あわてて考えたのが、昭和も平成も、そして令和でも通用する「税金の節約」。それを理由にし、佳子さまが持っている健全な「独立心」にはふれないこととする。以上、6月30日の公表内容から想像した宮内庁の作戦だ。