処遇の改善は、手当や賞与などの給料を上げたことと残業時間を減らしたこと、完全週休2日を導入したこと。そして職場の働きやすさを良くしたことだ。教育の充実など、勤労意欲、就業意欲を高める工夫もいろいろした。人事も刷新した。アメニティーや福利厚生ではなく、とにかく職場の働きやすさを重視することで働きがいのある職場を目指したという。

「現在、医師は早く帰るようになりました。残業時間は激減しています。有給休暇も必ず取るようになりました。昔は医師は有給休暇を取らないものでした。夏休みも3~4日程度でしたが、今は有給休暇のほか、リフレッシュのための休暇を取得しています」

 同院は職員のレベルがものすごく高い。個々の医療技術者のレベル、そしてチーム力は、循環器についてはおそらく日本一だと磯部医師は胸を張る。医療技術者や事務職の職業意識も高く、効率の良いシステムを作ることでタスクシェアもうまくいくようになった。

榊原記念病院院長の磯部光章医師
撮影/上田泰世(写真映像部)
榊原記念病院院長の磯部光章医師撮影/上田泰世(写真映像部)

「心臓のエコーを撮る、検査の報告書作成や症例の登録作業、他院などへの紹介作業など、私が大学にいたときは、全部自分でやらなければならなかったことが、当院はもともと分業でできていました。それをシステマチックにしたので、個々の医師に時間の余裕ができて、早く帰宅したり研究をしたりできています」

■診察待機日数を短縮し、患者数を増やす

 一方、病院の収入を増やすには、患者数を増やす必要がある。それまで同院は、そのキャパシティーに対して十分な患者を診療できているとはいえなかった。

 患者目線で考えたとき、改善すべき課題の一つは、診察待機日数の長さだった。

「私が当院に着任したときびっくりしたのは、初診患者さんの心臓のエコーを撮るのに患者さんは3カ月待ちでした。それでは患者さんが逃げて当たり前です。命令一下、即日エコーを撮り、診療方針はその日のうちに立てるように変えました。手術も、待機的で弁を取り替える心臓弁膜症の手術を1~1.5カ月程度に待機日数を短くし、不整脈のアブレーション(心筋焼灼術)も3カ月待ちだったのを、今は3週間に短縮しています。症状のある人はすぐに治療しますし、とにかく待たせないことを徹底しました。今、初診の患者さんの予約は1週間も待たせませんし、救急の診療は絶対に断りません」

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